風
その日、風はふわふわと吹いていた、あまりにも風が心地良いので、ゆっくりと眼を閉じ、大きく息を吸い込んだ。
それは、秋から冬にかけての風だ。
あの鼻の上に冷たさを、感じる、あの風だ。
そして風は、いつも、形を変えてやって来る。
いつもそうだ、毎回、形を少しづつ変えている、そうまったく同じ風は、二度と吹かないんだ。
その後に、風に耳を傾け風の音を聞いた時、風に色が見えてくる、赤から白へ。
そう秋から冬に向かって走って来る季節の様に、風に色を付けて来る。そしてその風を纏まとった木々達が、赤から白へ変化して行くのも、もう時間の問題だ。
やがてピンク色の風が吹くまで、人々は、この、今の風を感じながら、次の風を待っている。もう少しだから。
武井 こらむ