武井こらむ@言葉はアート

文章を色で表したい、そして文章を絵画にしたい。

その日、風はふわふわと吹いていた、あまりにも風が心地良いので、ゆっくりと眼を閉じ、大きく息を吸い込んだ。

 

それは、秋から冬にかけての風だ。

あの鼻の上に冷たさを、感じる、あの風だ。

 

そして風は、いつも、形を変えてやって来る。

いつもそうだ、毎回、形を少しづつ変えている、そうまったく同じ風は、二度と吹かないんだ。

 

その後に、風に耳を傾け風の音を聞いた時、風に色が見えてくる、赤から白へ。

 

そう秋から冬に向かって走って来る季節の様に、風に色を付けて来る。そしてその風を纏まとった木々達が、赤から白へ変化して行くのも、もう時間の問題だ。

 

やがてピンク色の風が吹くまで、人々は、この、今の風を感じながら、次の風を待っている。もう少しだから。

 

武井 こらむ

黄金色

鞄一つで旅に出た。

 

乗り込んだ列車の窓から見えた景色は、どこまでも続く黄金色。ずっと、ずっと続く輝く色。

 

その黄金色を見ていると、少し切なくなる。何故だろう・・。

 

考えは、空に浮かんでは消えて無くなる雲のように、後から後から形を変えてやって来る。そして陽が沈む頃、その色は、消えて無くなり、考えは、闇になる。


そう色々考えるのは、やめておこう。

 

夜になりまた朝が来れば、自分の瞳の奥にだけ、黄金色が見えてくる。その切なさも消えて。

 

武井 こらむ

小舟

湖に浮かぶ小さな舟の中で、眠ってしまったようだ。

 

ふと目を覚ますと、湖の色は綺麗なエメラルドグリーンに輝いていた、そうあの光を帯た翡翠の様な感じだった・・。

今迄に見た事の無い色・・。

 

うん、多分、もう同じ色をこの湖にみるこは無いだろう。

 

出会いもそう、この色も、一期一会であるから。

 

そしてこの瞬間、一瞬一瞬を大事にしなくては、ならないのだ。その時感じた気持ちは、きっと、本物だから。

 

その感覚、その感動を覚え、身体に染み込ませ、目を閉じ、瞼いっぱいに、その色を感じる。

 

そしたらまた、湖に浮かぶ小さな舟は、少しづつ動きだし、目的地に到着するだろう・・そうきっと・・眠る前に。
 

武井 こらむ

 

数だけある色

人の数だけ愛があり、またその色も人の数だけ無数に存在する。

同じ味も同じ体験も無い、そしてそこにある色も同じものなんて無い。

 


あなたの見てる赤は、私の赤では無く、あなたの見ている青は、私の見ている青じゃ無い。

 


そう、そして人の数だけ心もあり、またその色も人の数だけ無数に存在する。

 


見ている物が同じでも決して、同じ色に見える事は無い。赤にも無数あり、青にも、他の色でも同じだ。

 


そして、人のカラーもまた同じ色は無い、無数に存在する色なのだ。

 


他の人と同じ色である必要は無いのだから、あなただけの色を放てば良い。

 

武井 こらむ

涙で滲んだその頬は、淡いピンクと淡いオレンジにに光り、優しさに溢れていた。

涙で滲んだその唇は、儚い赤色で希望に溢れていた。

 


その涙の色は、薄い薄いブルーで透明の深い色を放っていた。寂しい色では無く、きっと人を暖かくする色なんだ。

大きくて広い海が、光りを浴びて輝くように。

 


そうなんだ、涙が溢れたその顔は、必ず明日を見つめている。

 


涙を拭いその顔に、もう涙は無い。

だからまた歩き出す、その一歩、優しい笑顔で。

 

武井 こらむ